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氷見の住宅
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ダイニングからゲンカン側を見る
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事務所併用住宅 | コミュニティ | 路地奥
再建築不可物件
2024(坂東幸輔・東工業株式会社と共同)
昭和13年9月6日、タバコの不始末から発生した氷見町大火により面積にして11万1000坪、市街地中心部の1543戸の家屋焼失する被害があった。その後、復興都市計画が起工され約14年をかけて復興した。
当時の火事による延焼から免れた地域の一部は、復興都市計画による区画整理や道路拡張の計画から外れ、当時の建物や細い道が今も残っている。
計画地は明治時代からある連投長屋が立ち並んでいた地域。前述した大火の延焼から免れ今も当時の建物や細い道が残っている地域である。大火後の区画整理による大きな更新から取り残されたこの場所は、主要な道につながる路地のさらに奥の奥、2メートルに満たない路地のみに面しており、塀などによって周辺の住宅地とは切り離され、古い空気が滞留していた。
再建築不可の物件が立ち並び、十数件が連なる長屋には2,3世帯を残しほとんどが空き家となっている。
本計画は、施主の旧自邸が建つ接道した敷地の一部を用いて再建築不可の敷地を接道させることで、新しく建物を建てる事ができる敷地へとよみがえらせ、街から切り離された地域の風通しを良くすると共に新たな地域資源の創造へのきっかけを作るものである。
旧自邸の敷地と計画敷地の間に造られた塀を取り除き、敷地の中に一本の“中路地”を設定する。この新しく設定される路地は、旧自邸に面する袋状道路を延長するような関係にあり街の道と路地奥をつなぐ。これによりひとと空気の流れを作り、町と切り離されていた地域の風通しの良い関係性を構築する足掛かりとなると考えた。
計画される建物は、施主の事務所を兼ねた住宅として計画されているが、施主の要望により、将来的な転用を想定した設計としている。住宅部分はシェアハウスへ、事務所部分は地域の図書室やポップアップショップなどへ、新たな改修を必要とせずそのまま使われ方の変化に対応することができるようあらかじめ法整理を行った。“中路地”を挟んだ空き敷地にはポケットパークや地域農園などを計画しており、地域住民が自由に、もしくはその場所を借りてイベントを開催できるような場所として設定し、地域交流の拠点としての機能を持たせることを想定している。
住宅の外観は、敷地周辺に立ち並ぶ氷見型町屋の形態を踏襲し切妻屋根を持つ矩形の単純なボリュームとすることでまちの人たちに親しみのある外観とした。
敷地内に設定した“中路地”面するこの住宅は、周辺に立つ平入りの町屋と異なり妻入りになることから、町屋の田の字間取りの1階部分のみを90度ひねったような平面計画としている。1階と2階の関係にねじれが生じたことにより、氷見型町屋が持つ玄関先の付け庇は形態としての必然性を失い、ゲンカンとミセの周囲にとりつく急勾配の庇を新たな言語として代替された。急勾配の庇は商店街の店先にとりつく看板を兼ねたオーニングをイメージしたものであり、施主の事務所の新たな記号としてこの住宅の顔として町に立ち現れるものである。
構造は木造在来軸組工法、外断熱工法を採用することで高い断熱・気密性能を持たせた。その副産物として内部の木構造部材を現わしにすることが可能になり、棚を新設したり、壁や建具を追加または減らしたりすることを容易にし、使われ方の変化に対応しやすい設えとなっている。
内装は合板の木の色とグレーを基調とした配色になっており、木の暖かさや香りを感じることができる落ち着いた生活空間を作り出している。
用途:事務所併用住宅
所在地:富山県氷見市
竣工:2024年3月
主要構造:木造
担当:江畑隼也 / モ・トstudio
坂東幸輔
東秀佳/東工業株式会社
構造設計:-
設備設計:-
撮影:dot DUCK
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